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死亡告知・遺体確認における遺族への心理的ケア

伊藤正哉,中島聡美
(国立精神・神経医療研究センター
精神保健研究所 成人精神保健研究部)
小西聖子(武蔵野大学人間関係学部)
柳田多美(大正大学人間学部)

1.はじめに

このたびの東日本大震災によって多くの人命が失われました。また、行方不明で安否の確認が出来ない家族もたくさんいらっしゃいます。大切な方を失った家族の悲しみや衝撃は計り知れないものがあります。特に、死の告知を受けたり、遺体を確認することは強い心理ストレスであり、激しい嘆き悲しみや、混乱などの精神的反応を起こすことが考えられます。このパンフレットは、このような遺族への心理的ケアについてまとめたものです。遺族の置かれた状況や被災地の状況によって必ずしも、このような対応ができないという面も多々あるかもしれません。このパンフレットを参考にしていただき、状況にあわせて柔軟に対応していただくようお願いいたします。

2.死の告知にあたっての留意事項

(1)死の告知の状況

今回の震災では通常と異なった形、異なった人から死の告知を受けることがある。通常は警察や病院の医師から告知を受けるが、行政職員や避難所のスタッフなどが行う場合がある。また、遺体安置所や被災現場で家族自身が確認することもある。従って告知をする場所も、自宅や病院ではなく、避難所や遺体安置所のことがある。告知を行う人は、どのような場所であっても、それを聞く人の心情や反応に配慮し、死の告知は重大なことであるという認識を持って伝えることが大切である。

(2)死の告知にあたっての留意点

告知にあたって、配慮するべき点を以下にあげた。上記のように必ずしもここにあげたことが出来ない場合がある。その環境で最善と思われる方法をとるべきである。

  1. 告知前に故人の状況(発見された状況や分かる場合には亡くなられた経緯など)についてできるだけ把握する。
  2. 告知者は自分の所属や身分を明らかにする。
  3. 告知を受ける人が伝えるべき相手かどうか、故人のどのような関係者であるか確認する。適切であると思われる成人の家族がまず告知を受けるようにする。子どもが一緒に聞くかどうかは成人の遺族に確認する。遺族が望む場合には、子どもも一緒に話を聞く。
  4. 告知は基本的には対面で行う。できる限り電話等での告知は避ける。
  5. 告知の場所はできるだけ他の人のいない静かな場所で行う。できれば遺族には座ってもらい、告知者も座って伝える。周囲に危険なもの(倒れたりすることがある)がないことを確認する。また幼い子供などが不用意にその場面に遭遇しないように気をつける。
  6. 遺族の顔を見て説明する。
  7. 簡潔でわかりやすい言葉を使う。(生存しているかのような誤解を招くあいまいな言葉は使わない。例:「治療する必要はありませんでした。」などというと無事であるかのような誤解をしてしまう)。誤った希望をもたせるようなことはしてはいけない。
  8. 敬意を持って丁寧な言葉を使う。
  9. 遺族はすでに亡くなったことに気付いているため、告知をためらって前置きを長くするようなことをしない。不要に苦痛や不安を長引かせてはいけない。
  10. 遺族の心理的混乱に対応する。(→4遺族の心理反応への支援)
  11. 遺族の質問に応えられる範囲でできるだけ答える(わからないこと、不正確なことは慰めであっても言わない)。
  12. 遺品など遺族が確認できるようにする。
  13. 告知された遺族が望む場合には、他の家族などに遺族が連絡したり、死別を告げる手伝いをする。
  14. 遺族の知りたいことや希望を確認し、できる範囲でそれに対応する。(遺体の搬送や埋葬等、届け出の手続きなど)
  15. 検視がある場合それについての説明を行う。(→3.遺体と対面する遺族への支援)
  16. 遺族のその後の支援ができる機関等についての情報を伝える。その場では覚えていられないので、できるだけ書いたものをわたす。

3.遺体と対面する遺族への支援

被災後の遺体の確認は遺族にとって非常につらい体験である。遺体との対面における遺族の苦痛やショックを和らげることや、対面時の心理的反応を支援することが重要である。

(1)遺体との対面場面への配慮

  1. 遺体をできるだけきれいにする。亡くなられた方の尊厳に可能な限り配慮する(体をきれいにする、損傷部位に包帯をまく、きれいな布をかける、棺にいれる、遺品をきちんと保存する、花をおくなど)。遺体安置所も花を飾るなど尊厳を持って弔いがされている環境をつくる。
  2. 亡くなられた方を名前や「息子さん」という言い方で呼ぶ。「遺体」や「死体」という言い方をさける。
  3. 遺体の損傷が激しい場合には、事前にそのことを説明する。
  4. 遺体を確認する人は遺族で決めてもらう。
  5. 遺体に対面するかどうかは遺族の意思を尊重する。損傷がひどい場合でもきちんと説明した上で遺族が見たいという気持ちを妨げない。・のような配慮をすることもある。
  6. 損傷がひどくてすべてを見せるのがためらわれる場合には、手や顔の一部など比較的きれいな状態である部分を見てもらうことも検討する。
  7. 可能であれば付き添って確認場所に入ってもらう(今回は難しいが、付添を希望する人には付き添えるようにする)。
  8. 対面するべき遺体とだけ対面できるように確実に案内する。
  9. 付添者は確認場所まで案内し、心理的な支えを提供する。また、確実に戻ってこれるように手配する。
  10. 対面時十分にお別れが言えるようにプライバシーを尊重する。付添者は少し離れて見守る。
  11. 対面時に遺族がどのような反応をしても、それを尊重する。遺体に触れることも危険がない限りは妨げない(皮膚が剥離してしまうような場合には事前にそのことを伝えておく)。付添者は、遺族が対面できるように支える。
  12. 対面しないことを希望する遺族のためには、遺体の写真をとっておくことが後日役に立つことがある。
  13. 写真で遺体を確認する場合には、見せる前に写真の内容を説明する。亡くなられた方だけを見ることができるように配慮する。
  14. わかる限りで遺族の質問に対応するが(どこで見つかったかなど)、不正確な情報を伝えないようにする。
  15. 一度遺体安置所から離れ、今後の手続き等について、相手の理解を確認しながら説明する。検視の場合はその手続きや必要性について相手の質問に答えながら説明する。
  16. 他の家族への連絡や、遺体をどのように連れて帰るか、遺品の受け渡し等具体的な対処を遺族が検討したり、行うのを手助けする。
  17. 今後遺族が必要としている社会資源や制度についての情報を提供する。また、今後の心理支援が行える団体等を紹介する。これらをまとめてあるパンフレットがあると便利である。その際、パンフレットには支援者の名前や連絡先を書いておくとよい。

4.遺族の心理反応への支援

(1)遺族の心理反応

遺体に直面することは大切な家族を失った事実に直面することであり、遺族には大変な衝撃をもたらす。このような状況では、遺族はしばしば以下のような反応を示す。

  • 泣く、泣き叫ぶ
  • ふらついたり、倒れたり、しゃがみ込んだり、座ったり立っていられない状態になる
  • パニック状態になる(過呼吸、動機、震えなど)
  • 強い怒りを示す
  • 死を認めようとしない
  • 自分を責める
  • 呆然とする、解離状態:支援者等の話に反応しない、表情がなくなる
  • 感情の麻痺:淡々とおちついている

*これらの反応には個人差がある。

(2)対応

遺体対面時の遺族の反応は多くの場合、このような事態に直面する衝撃からくるもので病的なものではないことが多い。遺族に共感的によりそうことで多くの場合、遺族自身が徐々に落ち着いてくる。

  • 支援者・告知者が動揺せず、暖かく共感的で落ち着いた態度や口調を示す。
  • 背中をさする、抱きしめる、手を握るなどの身体接触は慰めになることも多いが、一方不快に感じる遺族もいる。基本的には、相手の行動に合わせて行うべきであるが、支援者の側から身体接触をする際には、「手を握ってよいですか」という言葉をかけてから行うようにする。特に、家族以外の異性の支援者は身体接触は避けた方が良い。
  • あらかじめ遺族の混乱が予想される場合には複数の支援者・告知者が付き添う。
  • 最初は、遺族が泣いたり、怒ったりしている言葉を静かにうなずきながら聞く。なだめようとしたり、感情をむやみに抑えようとすることはしない。事実関係を述べて説得しようとすると口論になりやすい。(「こういう事情だったから早く連絡できなかったんです」など)
  • 遺族がパニックをおこしたら、椅子に深く腰をかけさせ、ゆっくり息を吸い、吐き出すように声掛けをする。
  • 少し落ち着くまでそばによりそって休ませる。一度遺体安置所から連れ出して、座れる場所につれていく。
  • 呆然として周囲の状況が分からないような状態(解離状態)になった場合は、穏やかに遺族の名前を繰り返すなど、声掛けを行う。むやみに体を触らないようにする。遺族が体に力が入らないようであれば、手を数回握ったり開いたりしてもらう、冷たいタオルをあてるなど、現実感覚を取り戻すような手伝いをする。
  • 遺族が一見冷静に見える場合でも、実際には落ちつた状態であるわけではない。「しっかりとしている」「大丈夫」など感情を抑制していることを褒めるような発言をさける。
  • きょうだいや親をなくした子どもに対して、たとえば、「しっかりしなさい」、「お母さんを支えるようにがんばりなさい」などその子が嘆き悲しむことを抑制してしまうような発言はさける。

5.その後のケア

  • (1)反応が強いあるいは、その後の状態が心配される遺族に対しては、別れる前にあらかじめ連絡先を聞き、後日連絡してもよいか確認する。
  • (2)可能であれば、1か月後くらいに連絡し様子を確認する。うつ病等が疑われる場合には、医療機関の受診をすすめる。
<参考文献>
  • (1)Pan American Health Organization & WHO: Management of Dead Bodies in Disaster Situations. Disaster Manuals and Guidelines Series, No 5, Washington, D.C., 2004
  • (2)柳田多美,中島聡美:突然の死の告知.金吉晴編:心的トラウマの理解とケア.第2版.じほう,東京,2006.