大きく

ふつう

文字サイズ

TOP 資料 > 被災者の飲酒問題への対応

被災者の飲酒問題への対応

飲酒は気持ちをやわらげ、ストレス緩和、解消の一手段となっています。逆に、ストレスにより、飲酒量が増えることも、また、飲酒がもとで、心身を害したり、対人関係上のトラブルを招いたりすることも往々にして見受けられる現象です。過ぎた飲酒は心身に悪影響を与えることは言うまでもありません。

■不眠と飲酒

被災によるストレスで、寝つきが悪くなり、やっと寝ついたかと思うと中途覚醒してしまう現象は誰にでも起こる正常な反応です。「寝つけない」、「目が覚める」と、飲酒を繰り返すと、アルコールが翌日まで持ち越し、日中のだるさとして精神活動、身体活動に悪影響を及ぼします。また、飲酒による睡眠は睡眠の質を悪くします。睡眠にはレム睡眠といって、脳は働きながらも、筋肉が休まる睡眠段階がありますが、飲酒によるレム睡眠は、筋肉の興奮を引き起こし、全身の倦怠感を生み出すことがあります。したがって、ストレスによる不眠に対しては、アルコールにたよらず、「不眠症状への対応」を参照してください。

■アルコール依存症の離脱

飲酒が継続している限り、アルコール依存症はなかなか顕在化しません。しかし、被災によりアルコールの供給が絶たれると、アルコール依存症は離脱症状(退薬徴候)として顕在化することがあります。この離脱症状は、早ければ、飲酒の減量や断酒後7時間頃より始まり、2~4日後にピークを迎え、重篤な場合には、その後3~4日間ほど持続します。

軽い症状としては、イライラ感、不安、抑うつ気分などの不快感情や心悸亢進、発汗、体温変化などの自律神経症状、手指・眼瞼・躯幹の振戦などがあります。重篤なものとしては、けいれん発作もありますが、特に重要なのは、振戦せん妄と言われる状態で、粗大な振戦、精神運動興奮、幻覚(幻視、幻聴が多い)、意識障害などの出現です。

軽い症状の場合には、症状が重篤化しないように、ベンゾジアゼピン系薬物を予防的に投与することが重要です。重篤化した後のベンゾジアゼピン系薬物投与はほとんど効果を示しません。また、これらの離脱症状の背景には、栄養障害があることが多く、その場合には、補液をしながら、ビタミンB1、B6、B12やニコチン酸、葉酸などを補液に加えます。振戦せん妄対しては、同様の補液と共に、夜間も室内を明るく保つと良いとされています。意識障害がありますから、目を離してはいけませんが、精神運動興奮が激しい場合には、隔離、拘束が必要になることもあります。

いずれの場合も、通常は1週間以内で離脱し終え、回復します。

■避難所での飲酒

避難生活が長期化してくると、避難所内での「酒盛り」の危険が否定できません。飲酒は気持ちを和らげ、ストレス緩和、解消の一手段となる反面、飲酒がもとで、心身を害したり、対人関係上のトラブルを招いたりすることも事実です。
避難所内での「酒盛り」は原則禁止です。

■飲酒と自殺

アルコール依存症はうつ病と共に、自殺との結びつきが強い疾患です。また、アルコール依存症者はうつ病を併存していることが少なくなく、そのことが、なおさら自殺との関連を強めています。
しかも、単なる「飲み過ぎ」でも、うつ状態を引き起し、自殺の危険を高めます。困難な問題を抱えている人が、飲みながらその解決策を考えたり、不安や苦痛、つらい気持ちをアルコールでまぎらわせるのは危険なことです。自暴自棄的な考えに陥りやすいからです。「追い詰められたときには、飲みながらものを考えない」ということが大切です。
震災という心的外傷下では、短期的にも、長期的にも、この問題も考慮しておく必要があります。

詳細は下記リンクをご参照ください。
久里浜アルコール症センター
e-ヘルスネット
e-ヘルスネット 薬物依存

(文責:和田 清 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 薬物依存研究部)